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【論文レビュー】新型コロナウイルス(COVID-19)のタンパク質Nsp1がm-RNA翻訳機構を阻害する

今回は、nature structural & molecular biologyの掲載論文SARS-CoV-2 Nsp1 binds the ribosomal mRNA channel to inhibit translationの紹介です。個人的に面白いなと感じたので、なるべくわかりやすく簡潔に紹介できたらと思います。元論文は下記リンクを参照ください。尚、解釈や理解が間違っている可能性もあります。どうぞご了承ください。

https://doi.org/10.1038/s41594-020-0511-8

論文の概要

この論文の研究では、新型コロナウイルスの非構造タンパク質Nsp1(細胞内でウイルスの複製に関与するタンパク質)が感染した細胞の翻訳機能を阻害してしまうことを明らかにしています。

翻訳機能とは

翻訳とは、細胞内でタンパク質を合成する過程を指します。細胞は、DNAと呼ばれる設計図を保管する核と、それ以外の領域として細胞質と呼ばれる部分に大きく分かれます。タンパク質合成は、核にある設計図を元に細胞質で行われます。しかし、その設計図は、最重要文書なので、核から持ち出し不可です。したがって、コピーしたもの(m-RNA)を細胞質まで持ち出し、タンパク質合成を行います。タンパク質合成には、60Sサブユニットと40Sサブユニットから構成されるタンパク質合成装置が使われます。それは、ダルマのような形をしており、コピーされてやってきた設計図を基に、タンパク質を合成します。出来上がったタンパク質は、合成装置から切り離され、細胞質の外へ出ていき、目的の場所へ運ばれていきます。

Fig.1  翻訳の流れ

Nsp1と翻訳機能阻害の関係

上記で示したのが、翻訳の一般的な流れです。翻訳とウイルスタンパクのNsp1がどのように影響していくのか説明したいと思います。Nsp1とは、ウイルス粒子の構造には関与せず、複製に関与する非構造タンパク質として知られています。昨今の研究では、ウイルスの複製だけでなく、宿主細胞にも様々な影響を与えるということが明らかとなっており、Nsp1は、ヒト40Sサブユニット(タンパク質合成装置の一部)に結合し、タンパク質合成を阻害するとされています。

Fig. 2 Nsp1の翻訳機能阻害

つまり、Nsp1はタンパク質合成に必要な設計図が入る場所に蓋をしてしまういうイメージです。したがって、一連の翻訳過程が阻害されます。しかし、ウイルスも自身の翻訳をするために、このタンパク質合成装置を使わなければなりません。自分の首を絞めているのかというと、そうではありません。Fig.2のようにタンパク質合成装置がNsp 1によって制限されてしまうと、残った合成装置は、ウイルスの設計図の方を優先するようになります。したがって、宿主の翻訳効率は低下させた上で、ウイルス自身の翻訳効率は高くなるということです。さらに、ウイルスの翻訳効率が低下しないようにNsp1が自身の発現量を調節しているとも考えられています。そのようにして、タンパク質合成装置をつぎつぎに乗っ取ってしまうという流れとなります。

 

この論文から見える希望

ここではお話し出来ていませんが、この論文では、Nsp1のC末端領域、つまり40Sサブユニットに結合する領域の同定に成功しています。このことは、新型コロナウイルスの弱毒化株の設計に役立ち、ワクチン開発の鍵となります。さらに、Nsp 1を介した翻訳阻害の考察は、Nsp 1自身の阻害剤の設計開発に役立ちます。
劇的に効く新薬の開発ではありませんが、こうした構造の解明から見えてくることもあると感動しました。マスクのない日常が戻ってくる日も近いかもしれませんね✨

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