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【イラスト解説】抗体カクテルについて【その効果とワクチンとの違い】

新型コロナウイルスが猛威を奮い続けて2年が経つ今でも、日本国内における感染者数は670万人を超え、死者数は3万人に達しようとしています(2022年4月現在)。特に年末年始から拡大したオミクロン株の影響は過去最高の感染者数となり、ピークは超えたものの未だ減少スピードは緩やかで、次の「第7波」に繋がる可能性が懸念されています。一方で、日本国内のワクチン接種率は1回目、2回目が80%を超え、3回目に至っても50%に届きそうな勢いです。ワクチンの効果も期待される中、昨今話題となっている「抗体カクテル療法」について今回は取り上げて見ようと思います。ワクチンとの違いや効果について知りたい方に読んで頂きたい内容です。

「抗体カクテル」とは?

「カクテル」というワードからお酒をイメージする方もいると思いますが、複数のリキュールをシェイクして作られるお酒のカクテル同様、複数の抗体を混ぜ合わせて作られるのが「抗体カクテル」になります。日本国内では、中外製薬により2021年7月に軽度から中等度の新型コロナウイルス(COVID-19)の治療薬として「カシリビマブ」と「イムデビマブ」の2種類の抗体を混ぜ合わせて点滴投与する「抗体カクテル療法」が承認されました。これまでに「レムデシビル」「デキサメタゾン」「バリシチニブ」の3つの薬が承認されていましたが、いずれも中等症から重症の患者が対象で、軽症患者に使用できる治療薬としては初となり、重症化リスクを軽減できる期待が寄せられています。

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「カシリビマブ」と「イムデビマブ」の2種類を混合した、この治療薬の一般名を「ロナプリーブ」と言います。後に認可された、同様の作用を持つ「ソトロビマブ」の一般名は「ゼビュディ」と言います。

発症してから早期に投与する必要がありますが、海外で行われた臨床試験では入院や死亡のリスクをおよそ70%減らす効果が確認されています。

「抗体カクテル療法」の効果

ウイルスの働きを抑制する仕組み

「抗体カクテル療法」は、2種類の抗体を同時に点滴投与することで、抗体が作用してウイルスの働きを抑える治療法です。わかりやすくイメージ図を用意してみました。

「抗体カクテル療法」ウイルスの働き抑制ステップ

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1
ウイルスが細胞に吸着しようとやってくる

ウイルスは、細胞表面にあるレセプターと呼ばれる受け皿にトゲのような突起部分を結合させることで細胞内に侵入しようとします。細胞内にウイルスの侵入を許してしまうとウイルスの増殖が促されてしまいます。

 

 

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2
抗体カクテルを投与💉

そこで、登場するのが「抗体カクテル」です。この中には、遺伝子組み換えにより人工的に作製された「カシリビマブ」と「イムデビマブ」というモノクローナル抗体が含まれています。1種類の抗体だけだとウイルスが変異したときに効果が落ちてしまいますが、2種類の抗体を同時に使うことでウイルスの異なる抗原部位に結合するため、変異による抗体耐性をつきにくくすることが出来ます。

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モノクローナル抗体とは、1種類の抗体産生細胞からクローニングされて出来た抗体です。通常の抗体はポリクローナル抗体といい、複数の抗体産生細胞から産生された抗体が含まれています。標的となる抗原の認識の強さは、モノクローナル抗体>ポリクローナル抗体となります。

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3
ウイルスの細胞への侵入を防ぐ

点滴投与された2種類の抗体はコロナウイルスの表面のスパイク糖タンパクを認識して結合します。それによって細胞のレセプターに結合しなくなるため、感染が体内に広まらなくなる仕組みです

 

 

発症から7日以内に投与することで重症化を防ぐことができることに加え、海外での治験では、感染発症を予防する効果も確認されています。

ワクチンとの違いは?

まず、ワクチンとは不活化或いは毒性を取り除いた病原体を体内に入れて免疫をつけることで病気にかかりにくくするものです。新型コロナウイルスのワクチンは特殊で「m-RNAワクチン」と言います。「m-RNAワクチン」は、ウイルスではなく、ウイルスの持つトゲのような突起部分をコードしたRNAを注射により体内に入れます。RNAとは、いわゆる生物の設計図で、体内に入ったウイルス由来のRNAは、ヒトの細胞を使ってウイルスのトゲ部分のタンパク質を作り出します。そのトゲタンパク質を抗原とし、体内で抗体を作り出し、再び外界からウイルスが侵入しようとしてきた時に免疫系が働く仕組みです。

一方で抗体カクテル療法は、体に抗体をつくらせるのではなく、外部から抗体を点滴投与で体に入れることでウイルスがヒトの細胞に侵入するのを阻害する効果を発揮します。ワクチンと比較し、効果期間は短いですが、発症の予防にも効果があるそうです。

新型コロナウイルス感染予防の基本はやはりワクチン接種による獲得免疫を高めることですが、人によっては、基礎疾患や使用している薬剤の影響などで、ワクチンが使用できなかったり、十分な効果が期待できないことがあります。そのような場合に選択肢として、「抗体カクテル療法」があります。

「抗体カクテル療法」の対象

「抗体カクテル療法」は50歳以上や糖尿病、慢性腎臓病、慢性肺疾患の持病があるなどの重症化リスクが高い軽症・中等症患者を対象にして、東京や大阪などで導入されており、宿泊療養施設や臨時の医療施設での投与が認められています。

日本での販売権を持つ中外製薬は、海外の治験で患者の家庭の濃厚接触者に投与した結果、感染して発症するリスクを81%減らす効果が確認できたとして、発症を予防する目的での投与も認めるよう追加で申請していました。しかし、安定的な供給面が難しいため厚生労働省は原則として重症化リスクや免疫抑制状態であることを条件に承認を了承しました。

投与対象者まとめ

重症化リスクを有する軽症・中等症のコロナ陽性者

発症抑制目的の濃厚接触者 ※免疫抑制状態や重症化リスクを有しているかなどの条件あり

発症から7日以内

まとめ

いかがでしたでしょうか?似たような内容の記事が他にもありますので下記の関連からチェック頂けたら幸いです。読んでくださった方の少しでもお役立てしますように。

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