新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、注目を集めている「抗体検査」。抗体についてのあれやこれについてイラストで解説!
そもそも抗体とは?
抗体とは、脊髄動物の感染防御機構において体の外から侵入してきた異物を排除するために働くタンパク質です。抗体は、異物(抗原)に対して免疫系が反応した結果、B細胞によって作られます。個々の抗体は、体内に侵入してきたウイルス等の病原因子に結合し、これを無毒化し排除する働きをします。
抗原を無毒化させる免疫グロブリンG(IgG抗体)
哺乳類の血液に大量に含まれていて、研究用試薬や診断薬に利用されているのが、免疫グロブリンG(IgG)という抗体です。近年の新型コロナウイルスの抗体検査にも指標として用いられます。IgGは、小さい部位の軽鎖と大きな部位の重鎖がジスルフィド結合によって繋がれたおよそ150kDaの安定したタンパク質です。
Da(ダルトン)とは、タンパク質の質量単位。
ジスルフィド結合とは、二つのシステインが酸化反応にによって形成する結合。この結合は、タンパク質の構造を安定化させる。
抗原結合部位と抗原が特異的に結合し(鍵と鍵穴の関係)、抗原抗体複合体を形成します。
抗体の作製法
任意の抗原に結合するIgGを、人為的に大量に得る抗体の作製法が確立しています。
抗原として、遺伝子組み換えタンパク質(弱体化させたウイルス無毒なウイルス)または化学合成ペプチドが用いられることが多い。実験用動物に抗原を注射することで、対応するIgG抗体が作られ血液中に送られます。この血液の血清を精製して利用するが、複数のB細胞が応答して抗体が作られるため、同じ抗原に結合する抗体が何種類も混在しています。(ポリクローナル抗体)
あるいは、抗原を注射したマウスの脾臓を摘出し、その抗体産生細胞を株化培養し、抗体を産生させます。単一の抗体産生細胞に由来するため、構造が均一な抗体が得られます。(モノクローナル抗体)
モノクローナル抗体の方が特異性が高い。
抗体検査
抗体は、一度ウイルスなどの抗原が体外から侵入してくると作られるため、2回目以降はウイルスに対する耐性ができます。抗体検査薬は、その抗体を保有しているか、していないかを調べる検査です。保有していない場合は、ウイルスに対する耐性ができていないため、人混みや外出をなるべく避ける必要性が出てきます。もちろん、抗体を保有しているからといって感染しないわけではなく、同様に注意は必要です。
新型コロナウイルスの抗体検査では、採血検体を使用したキットが用いられており、IgG抗体とIgM抗体の両方を検出できるそうです。IgM抗体は、感染初期に産生される抗体だが、短期間で減少していくのに対し、IgGは、IgMより遅れて増えてくるが比較的長期にわたって免疫に記憶される。この二つのタイプの抗体を検査することで、ウイルスに応答した結果(ウイルスに抵抗する力があるかどうか)がわかります。
C:コントロールライン T:テストライン
Cの線とTの線が両方検出されれば陽性。Cの線のみは陰性。Cの線が出ない場合は、無効となる。
PCR検査との違いは?
PCR検査は、ウイルスに感染しているかどうかが分かる検査に対し、抗体検査は、ウイルスに対する抵抗力を持っているかどうかが分かる検査です。
短時間かつ正確性に長けていることから、PCR検査の不足分を補うことが可能とされます。
抗原抗体反応の検出
研究用
- ウエスタンブロッティング
- 免疫染色法
- 免疫沈降法
診断用
- ラテックス凝集反応法
- ELISA法
- イムノクロマト法
さらに詳しく
イムノクロマト法
イムノクロマト法は金コロイドなどで標識された抗体が、抗原と複合体を形成し、毛細管現象によりセルロース膜上を移動した後、あらかじめ検出ライン上に固定された同じ抗原に対する抗体と結合します。金コロイドは紫色をしているので、抗原が含まれていた場合には、検出ラインが呈色され、目視により反応の有無を判定します。検査キットとして有用。