バイオのお話

【自然の毒】生き物の「毒」のお話

今回は身近にあふれる「毒」についてのお話です。「毒」と聞くと、怖いイメージがありますよね。でも自然界にあふれる「毒」は、生き物が自分の身を守るために生み出した生存戦法だと思うと魅力的にも思えませんか?身の回りの毒について、怖いけど、興味はある方は見ていってくださいね♪

 身の回りの毒①植物編

綺麗なバラにはトゲがあるように、美しい花を付ける植物の中には、毒を持つものもあります。意外と身近な植物かも知れませんよ!

✔︎スイセン

スイセンは、植物体全体にヒガンバナと同じ毒成分である「リコリン」を含んでいます。スイセンの葉をニラと間違えて食べ、食中毒を引き起こすケースが多いと言われています。

✔︎イヌサフラン

クロッカスに似た薄紫の美しい花ですが、植物体全体に「コルヒチン」という毒を含みます。摂取すると、皮膚の知覚が麻痺し、重症になると呼吸麻痺で死亡します。りん茎(球根)を玉ねぎと間違えるケースが多いそう。

✔︎スズラン

あの可愛らしくて清楚なスズランにも毒が・・・。植物体全体に「コンバラトキシン」という毒を含みます。摂取すると、嘔吐、めまい、心不全、心臓麻痺などの症状を起こし、重症になると死に至ります。スズランを活けた花瓶の水を誤って飲んだ子供が命を落とした事故もあるそうです。心臓に疾患のある人は、匂いを嗅ぐのも注意が必要です。

✔︎トリカブト

日本を代表する猛毒の植物として知られています。植物体全体に「アコニチン」という猛毒を含みます。食べたらもちろんですが、傷口から樹液が入るだけでも中毒になります。主な症状は、不整脈、嘔吐、口角・四肢のしびれなど。山菜のニリンソウとよく似ているため、食中毒事故が起こります。

✔︎夾竹桃(キョウチクトウ)

葉が竹に、花がモモの花に似ていることから、この和名が付いたそうです。キョウチクトウは排ガスに強いため、街路樹や園芸植物に用いられますが、「オレアンドリン」という強い毒成分を含みます。植物体全体に毒があるだけでなく、周辺の土壌にも毒が広がります。生木を燃やした煙にも毒があり、腐葉土にしても1年間は毒が残るそうです。枝をバーベキューの串にして死亡した事故例があります。

 身の回りの毒②キノコ編

自然界の毒といえば、毒キノコですよね!日本には、4000種類ほどあると言われていますが、その3分の1は毒キノコだそうです。恐るべし。

✔︎カエンタケ

名前の通り、オレンジ〜赤色で炎のような不気味な形をした、いかにもヤバそうなキノコです。触っただけでも皮膚が炎症を起こし、食べてると死に至ります。毒成分はカビ毒の一種で、内蔵全般に症状が現れ、治っても後遺症が残ると言われています。

✔︎ヒトヨタケ

このキノコは成熟すると、自分の消化酵素によって溶け、黒い液体になってしまうことから名前が付きました。おいしいキノコであり、普通なら毒性もないのですが、お酒と食べると大変です。ヒトヨタケは、お酒によって体内でできたアルデヒトの分解酵素の働きを阻害するため、重度の二日酔いを引き起こします。「コプリン」という成分がエタノール代謝を阻害します。

✔︎スギヒラタケ

かつては食用キノコとされていましたが、腎機能障害を持つ方が、このきのこを食べて急性脳症を発症しました。毒成分などの原因は不明で、究明が進むまでは、摂取しないよう政府が呼びかけています。

✔︎ベニテングタケ

ご存知の方も多いはず!赤い卵型に白い斑点を持つ象徴的な毒キノコです。主な毒成分は、「イボテン酸」、「ムッシモール」、「ムスカリン」等で、腹痛、嘔吐、下痢、痙攣などを引き起こします。イボテン酸は、アミノ酸の一種であり、旨味成分として知られるグルタミン酸の10倍もの旨味を持つと言われています。とても美味しいらしいですが、その後に地獄が待っていると思うと食べる勇気は出ないですね😅

 身の回りの毒③海の生き物編

広い広い海には、見たことのない生き物もたくさんいて、危険もたくさん潜んでいます。

✔︎フグ

フグには、多くの種類がありますが、多くは、テトロドトキシンという毒を持っています。神経毒の一種で、神経伝達を阻害し、全身の運動麻痺や呼吸困難を引き起こします。耐熱性に優れており、加熱だけで分解されないそうです。フグはこの毒を自ら作り出すのではなく、餌から集めて体内に蓄積します。そのため、毒入りの餌を食べることが無い養殖のフグは無毒だそうです。ただし、天然のフグと同じ水槽で飼っていると、毒が移ることも・・・

✔︎貝類

フグと同様、貝毒も自ら毒を作り出すのではなく、餌のプランクトンに含まれる毒成分(サキシトキシンブレベトキシン)を体内に蓄積します。イモガイ科に属する貝類は、毒針を持っており、狩りや自己防衛を行うそうです。この毒針には、「コノトキシン」という神経毒が含まれ、人間も刺されると死に至るほど猛毒です。

✔︎ヒョウモンダコ

体調10センチほどの小型のタコで、以前は日本近海に生息していませんでしたが、温暖化の影響で日本の岩礁地帯に現れるようになりました。気性が荒く、怒ると全身に青い輪状の模様が現れます。毒成分は、フグと同じ、テトロドトキシンで、噛まれると毒が注入されます。上記のイモガイと供にダイビング時における危険生物として要注意の筆頭に挙げられています。

おまけ:ミステリーなんかでよく出てくる「青酸カリ」

毒として有名なのが「青酸カリ」です。わずか200 mg(0.2 g)で大人1人が死にいたると言われています。青酸カリは人口の毒物で、日本だけで年間3万トンも生産されているとそうです。こんな危険な毒物をなぜこんなに作るのでしょうか?それは、金を溶かすためです。青酸カリの水溶液は金を溶かすため、金メッキの必需品です。

 まとめ〜毒とくすり〜

今回は、身近な毒についてまとめてみましたが、調べれば調べるほどいろんな種類が出てきますね。生き物の他にも金属毒というものがあり、鉛や水銀などが有名です。これまで、毒の怖い面を述べてきましたが、「毒とくすりは紙一重」という言葉があるように、時として毒は薬にもなりえます。例えば、猛毒のトリカブトは、一方で漢方として用いられ、強心作用や鎮痛作用があるという。創薬研究においても天然物の毒は、まだ見ぬ新薬への手がかりです。このように裏と表の顔を持つ自然界の毒に魅力を感じてしまいます😅哺乳類で毒を持つ種ってなかなかいないのはなんででしょう?

 

参考文献「身近にあふれる化学が3時間でわかる本」

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