バイオのお話

食品に用いられる生体分子【糖質】【アミノ酸・タンパク質】【脂質】

私たちの生活を快適にするため、或いは地球環境を改善するために生体分子はさまざまな場面で応用されています。生体分子と聞くと難しいイメージがあるかと思いますが、毎日のように食べている食品に使用されています。今回は、そんな食品に使われている生体分子の構造や性質を知り、身近に感じて貰えるようになったら嬉しいです。

 アミノ酸・タンパク質

うま味調味料

今や日本食に欠かせないだしの化学成分として、1907年に池田菊苗によってグルタミン酸ナトリウムが昆布だしから発見されました。翌々年には「味の素」として製品化され、以来100年位以上に渡りうま味調味料として用いられています。また、カツオ節のうま味成分イノシン酸と干し椎茸の旨味成分グアニル酸も日本人科学者により発見されています。

代表的なうま味成分の構造

 

さらに詳しく

基本味について

現在、基本味には甘味、酸味、塩味、苦味、うま味がある。2008年にはカルシウムを受容する味覚受容体が見出され、2010年には脂味があると提唱されている。今後、基本味は追加される可能性がある。

豆腐

豆腐は大豆タンパク質がゲル化させたものです。大豆タンパク質は、酸性タンパク質(カルボキシ基もつ)が多く、そこににがり(塩化マグネシウム)を加えるとマグネシウムイオン(Mg +)が大豆タンパク質のカルボキシ基と静電相互作用しタンパク質間で橋がかかり(架橋という)ゲル化します。

豆乳が豆腐になる過程(タンパク質のゲル化)

 

魚肉練り製品

かまぼこや竹輪は魚のすり身のタンパク質を凝固させたものです。凝固には、トランスグルタミナーゼという酵素が用いられていることあり、味覚や風味を損なわずに程よい弾力を与えることが出来るそうです。この酵素は麺のコシを高めるのにも用いられています。

プロテアーゼの利用

プロテアーゼとは、タンパク質をより小さい粒子に分解する酵素の総称を指します。食品製造にもしばしば用いられており、果物のプロテアーゼであるパパイン(パパイヤ由来)やブロメライン(パイナップル由来)は食肉の軟化に、アクチニジン(キウイ由来)は口臭予防のタブレットに用いられています。

 単糖・二糖

甘味と幸福

「味」には美味しさでけでなく、様々な要素があります。塩味が強ければ毒性の金属成分が強い可能性があったり、酸味が強ければ植物の腐敗成分が強い可能性があります。しかし、甘味にはそのような警告の意味はありません。甘いものは美味しく脳に働きかけ、人に安らぎと幸福感を与えてくれます。甘いものといえば、スクロース(ショ糖、いわゆる砂糖)を思い浮かべますが、天然の甘味料(蜂蜜、甘酒、果物)のほか人工甘味料も存在します。どんなものがあるのか見てみてくださいね。

スクロース

いわゆるお砂糖です。世界で最も消費されている甘味料です。グルコースとフルクトースからなる非還元性の二糖です。サトウキビあるいはテンサイのしぼり汁の上清を精糖して得られます。

グルコース

生物のエネルギー源となる糖の一つです。スクロースに甘さは劣るが安価で上品な甘さがあるため製菓などによく用いられます。輸液などの医薬品としても需要も高いです。

フルクトース

スクロースより甘味の強い果糖(果物に含まれる糖)。

さらに詳しく

冷やすと美味しい果物

フルクトースの甘さは温度に依存(低温で甘さが強いβ-フルクトフラノースの割合が高くなる)するため、フルクトース含量が高い果物(リンゴ、梨、葡萄など)は冷やした方が甘くなる。フルクトース含量が低い果物(みかん、バナナ)は冷やさなくても甘さはあまり変わらない。

マルトース

マルトース(麦芽糖)はグルコース2分子が結合した二糖で、水飴の主成分です。スクロースの30%の甘さで、料理の照り出しや和菓子などに利用されています。

キシリトース

キシリトールはスクロースと同程度の甘さを有しながら、カロリーが4割ほど低いです。代謝にインスリンの助けを必要としないため糖尿病患者の甘味料としても用いられています。虫歯になりにくく、冷涼感があるためキャンデイなどの菓子にも用いられています。

エリスリトール

果実や発酵食品に含まれる糖アルコールです。スクロースの75%の甘さがありながら、代謝されないため、糖尿病患者の食品に用いられている。冷涼感があり、苦味を抑える効果があるため、栄養ドリンクや野菜ジュースに用いられている。虫歯にもなりにくい。

さらに詳しく

『カロリーゼロ、糖類ゼロの自然派甘味料』が売りのラカントSについて

カロリーコントール食品として話題を呼んでいる「ラカントS」の原材料は「エリスリトール」と「羅漢果の高純度エキス」の2つのみ。「エリスリトール」は前述のとおり、代謝されない糖なので糖尿病患者の甘味料にも使用されています。「羅漢果」とは中国原産の強い甘味を持つ果実で、その高純度エキスは砂糖の300倍の甘さを持っている。これらは2つとも摂取しても体内で吸収されずに汗や尿として排出されるため体内でエネルギー源とならず実質カロリーゼロというわけです。熱にも強い成分なので、スイーツのほか煮物にも使えます。

人工甘味料

代謝され、エネルギーを生み出す単糖・二糖がある一方で、甘さはあるが代謝されないアスパルテームなどの人工甘味料があります。いわゆる「カロリーゼロ」の甘味料です。これらの人口甘味料は、舌の甘味受容体に感知されると強い甘さを感じさせます。

スクロースを100としたときの相対的な甘さ
スクロース 100
グルコース 74
フルクトース 173
マルトース 32
キシリトール 100
エリストール 75
アスパルテーム 20000
スクラロース 60000
アセスルファムカリウム 20000

血糖値が上がらないため、インスリンが分泌されず糖尿病患者の治療に有用な一方で、甘いものを食べているのに血糖値が上がらないため脳が異常に反応してしまい、より甘いものを欲して食べすぎてしまい太りやすくなるとも言われています。

    脂質

植物油脂

資質を含む食品の代表的なものはトリアシルグリセロールを多く含む植物油脂です。オレイン酸、リノール酸などがあります。

機能性脂肪酸

エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は体内に良い作用をもたらす脂肪酸として知られています。これらはマグロ、カツオ、イワシの頭部に多く含まれており、血栓溶解作用等が期待されています。

乳化剤

水と油は混ざりにくいが、乳化剤を入れることによって均一な混合物になります。アイスクリームやチョコレートは乳化剤により油を水や粉体に分散させている。乳化剤にはレシチンがよく用いられています。

   発酵を利用した食品

発酵食品とは

私たちは細菌に囲まれて生活をしています。細菌は私たちの体そのものや食品を食べて繁殖しており、その際人間にとって都合が悪い副産物を出すことを腐敗、都合の良い副産物を出すことを発酵と呼んでいます。原理的に行われていることは同じです。

アルコール飲料

ワインはグルコースを多く含むブドウ果汁を原料とするため、糖化という過程を必要としません。ブドウに付着した酵母が、醸造過程でグルコースをアルコールに変換します。これをアルコール発酵と言います。ブドウや酵母の種類、発酵条件によりワインの成分(有機酸や糖など)が異なるため適した飲み方があります。

糖化とは

多糖を加水分解して、単糖あるいはオリゴ糖にまで分解すること

ワインの場合、原料に糖分に糖分が含まれるためアルコール発酵が進む

ビールは、オオムギのデンプンを原料とします。アミラーゼが多く含まれる麦芽によって糖化を行い、酵母を添加してエタノールと炭酸ガスを生産するアルコール発酵を行います。

ビールの場合、「糖化」と「アルコール発酵」が別で行われる

日本酒はお米のデンプンが原料です。強力なアミラーゼを分泌する麹菌により糖化します。酵母も加えることで、糖化とアルコール発酵を同時に行います。

日本酒の場合、「糖化」と「アルコール発酵」が同時に行われる

さらに詳しく

「日本の国菌」麹菌について

日本人の食生活に欠かせない醤油、味噌、みりん、日本酒などの生産には糸状菌の一種である麹菌が関わっています。特に黄麹菌が関わる発酵食品が多いです。この黄麹菌は、日本にしか存在せず、古来から受け継がれていく過程で「毒を生産しなくなった」、家畜化された麹菌とも言われています。桜や菊が日本の国花とされていることになぞられて、麹菌は日本の「国菌」であると提唱されている。

発酵食品

醤油は蒸煮した大豆と炒って砕いた小麦を原料とします。麹菌によってデンプンをグルコースに、タンパク質をアミノ酸にまで分解し、もろみとし半年かた一年熟成させます。この間、糖とアミノ酸によるメイラード反応によりさまざまな香り成分が作られ、醤油の風味が作られます。

メイラード反応とは

タンパク質あるいはアミノ酸と糖が反応し、褐色物質を生じる反応

味噌は大豆を蒸したものを原料とします。米麹と塩を混ぜ、グルコースやアミノ酸に分解します。発酵が進むと、メイラード反応が進行し、茶色に変色してきます。

パンは、小麦粉などの穀物粉を原料とします。酵母により発酵させて粘り気のあるグルテンを形成します。これが網目構造をしており、パン生地の骨組みとなります。発酵の過程で発生する二酸化炭素によりパンが膨らみます。パンの持つ独特な風味や味は、発酵の過程で産生されるアルコールや有機酸によるものです。

乳酸発酵

ヨーグルトは一度煮沸した牛乳に乳酸菌を混ぜて作ります。乳酸菌(乳酸菌という特別な菌がいるわけではなく、乳酸を発生する細菌が一括りでそう呼ばれている)が乳酸発酵を行い、乳酸を生成します。乳酸の影響で溶液が酸性になり、牛乳のタンパク質(カゼイン)が変性してゲル化しヨーグルトとなります。

 

チーズは牛乳を部分的に乳酸発酵させて酸性になった溶液にレンネットを作用させて作ります。レンネットはウシやヒツジの胃で作られる酵素の混合物で、牛乳のタンパク質であるカゼインの特定位置を切断します。切断されたカゼインは酸性かつカルシウムイオン存在下で凝集し、水を抜くことで濃厚なチーズが完成する。尚、レンネットの代用品としてレモン汁やクエン酸、グレープフルーツ果汁なども使用できるそうです。自家製チーズをつくりたい方にとっては手に入りやすい品物なのでありがたいですね。

   参考文献

いかがでしたか?今度みなさんが身近な食品を見かけたとき、あるいは口にするとき思い出していただけたら嬉しいです。もっと詳しく知りたい方は下記テキストも参考にしてみてください。

参考・引用テキスト

生体高分子の基礎 https://amzn.to/38S0O7b

身近にあふれる「化学」が3時間でわかる本 https://amzn.to/3jU0LtH

-バイオのお話
-, , , , , , , , , , , , , ,

© 2024 Biolog〜バイオのフリーイラスト〜 Powered by AFFINGER5